ジアルジア症ってどんな病気? 簡単な概要

「Giardia lamblia 」の感染によって引き起こされる下痢性疾患であります。本症の感染経路は糞口感染というもので、人と人の接触や食品等を介した小規模な集団感染、飲料水等を介した大規模な集団感染が知られています。

「Giardia」の種名については諸説ありますが、現在日本では慣例的に「G.lamblia」を用いており、当面の間は形態的に「G. lamblia」と判断される原虫に対しては一律に、病原性があるものとして扱う事になっています。

ジアルジア症の感染者数は世界中で数億人に達しています。「G. lamblia」は地球規模で見ればごくありふれた腸管系原虫であります。世界中のほとんどの国で有病地を抱えており、特に熱帯・亜熱帯に多く有病率が20%を超える国もあります。

多くの感染症が衛生環境の改善と共に姿を消していったことは周知でありますが、ジアルジア症の感染率も次第に低下していき今日の都市部での検出率は0.5%を下回る程度となっています。

ジアルジア症って主にどんな人が病気になるの?原因は

感染のリスク要因は主に海外であります。特に発展途上国への旅行や男性同性愛とされています。

海外旅行での感染症例には赤痢菌、下痢原性大腸菌や赤痢アメーバ等との混合感染例が少なくありません。

その一方で、水系感染による集団発生事例が先進諸国で大きな問題となってきています。これには都市化など社会形態の変化に伴い、水の再利用が進んだ事が大きく影響しているようです。なお、感染症法施行から2003年12月までに確認されたジアルジア症例数は、年間100例前後になります。このうちの6割以上が海外での感染と推定されています。また、集団感染事例は知られていません。

現在、日本でみられるジアルジア感染者の多くは、発展途上国からの帰国者等であり、特にインド亜大陸からの帰国者の下痢症例で数字が高くなっています。

また、男性同性愛者間でも原虫の感染があり、HIV感染者に原虫が証明されています。ジアルジア症は過去数十年間、日本では忘れ去られた感染症の1つでしたが、免疫不全者の感染や水系感染等による集団発生事例から重要な再興感染症の1つとして再認識が必要であります。

ジアルジア症の主な臨床症状としては下痢、衰弱感、腹痛や脂肪便等が上げられます。有症症例では下痢が必発であり、下痢は非血性で水様または泥状便であります。

排便回数は1日数回〜20回以上と個人差があり、腹痛を伴う例と伴わない例も確認されており、発熱は多くの場合みられません。感受性は普遍的であるが、成人よりも小児の方が高い感受性を示しております。感染者の多くは無症状で、便中に持続的に嚢子を排出している嚢子保有者であるが、感染源としては重要であります。

ジアルジア症の改善方法

ジアルジア症の治療にはメトロニダゾールやチニダゾール等のニトロイミダゾール系の薬剤が多く用いられます。これらは現在の日本では、抗トリコモナス薬として薬価収載されているものであり、本症に対しては健康保険の適用外になります。

ジアルジア症は典型的な糞口感染であり、嚢子で汚染された食品や飲料水等を介して伝播していきます。

嚢子は感染力が強い為、排泄者に対しては排便後の手洗いの指導が重要であります。一般的には、嚢子排出者は無症状か下痢症状があっても軽微であることが多く、身辺の清潔が保てる為隔離の必要はありません。

また、嚢子は水中で数カ月程度は感染力が衰えることはなく、小型でもある為、浄水場における通常の浄水処理で完全に除去することは難しいです。

塩素消毒にも抵抗性を示しています。なので、HIV感染者をはじめとする免疫機能低下者は、日常生活の上で、なま物や煮沸消毒されていない水道水等の摂取には十分に注意するべきです。