結婚して3年目の出来事

昼下がりの日曜日

ある日、妻と近くの河原を散歩していました。その日は春の日差しがすごく気持ちよくてちょっと遠出になってしまいました。マンションのモデルルームがあったので冷やかしに入ってみたところ、エアコンの冷たい風が当たり、お腹に「ずん」と衝撃が走りました。妻は「こんなうちに住みたいねー」とのんきに言ってますがこっちはそれどころではない。

適当に相槌をうち、早くトイレに行きたと思い「トイレ見てみるねー」声をかけました。遠くから妻の返事は聞こえましたが、なにをいっているのかわからない。まあ大丈夫だろう、と思ったのが失敗の始まりでした。

トイレには「水道が通っていないのでご利用できません」当たり前だ。ここはモデルルームだ。自分の浅はかさに嫌気がさし、「やっぱりー。だから言ったのに。」と妻に言われました。

帰り道、お腹はドンドン痛くなってきます。妻に腹痛を悟られないよう、普通に会話をしていたのですが、限界が近づいてきました。すると「あんた、お腹痛いんじゃないの?」と妻が尋ねてきました。

私は「うん、ちょっと悪いけど先に帰るね」と言って早歩きを始めました(後ろのほうで妻が「漏らすなよー」とエールを掛けてきたのが聞こえましたが、それはそれで恥ずかしかったです)。本当は走りたかったのですが、そんな余裕はもうありませんでした。歩くのも精一杯でした。

駆け込むコンビニ

しばらくし、我慢ができず、コンビニにかけこみました。幸い、ドアロックの色は青色、ぽたぽたと落ちる汗をぬぐい、ドアをあけましたが、チャックが壊れズボンが脱げません。あ、っと思っているうちに「ブチュチュチュチュッ」と個室に音が響き渡りました。

放心した心の中無言で立ち尽くすと、
コンコン「すみませーん」
と店員ではなく妻の声がきこえました。
ひっそりと妻の名前を呼ぶと、
「大丈夫?」
と返事がきこえました。
無言のままいると妻がちょっとまっててとの言葉とともに立ち去りました。
10分後、
コンコンと音とともに「開けて」と妻の声が聞こえました。
そっと私は扉を開けると、ビニール袋を差し出され、中にはパンツとロングのTシャツがはいっていました。
「さすがにズボンは売っていなかったわー。でもTシャツ腰に巻けば家に帰るまではだいじょうぶでしょ?」
女神がいるんだ。そう実感し、いそいそと、着替え、コンビニをあとにしました。
帰り道なんでコンビニいたのか尋ねると、
「結婚して妻になったんだからわかるよー」
とながされました。そして
「ほんと私がいないとだめなんだから」
いたずらな笑顔とともに妻はいいました。

思い出す、あの日、あの時、あの言葉

私はその妻の笑顔を見て思い出しました。プロポーズをした時も緊張のあまりレストランでグラスをたおしてしまい、
妻は笑いながら「ほんと私がいないとだめなんだから。ずっとそばにいてあげる」
そういってくれました。
本当にこの人と結婚してよかった。うんちを漏らしたが、あのプロポーズの日を思い出すことができました。

日が沈み、夜、ベットで妻の肩を抱き寄せたところ
「そんな気分じゃない」
とあしらわれ、こりゃ一生頭が上がらないなと妻の強さを実感した一日でした。