便意とともに刻まれた演奏会

あれは私が小学生の頃の事です。当時母の勧めでピアノを習っていた私は、ある日発表会に出ることに。当時までは全く緊張感などなく、可愛いワンピースをあてがわれて喜んでいた私。しかし、発表会当日になると、急に緊張が漂い始めました。母親も朝からせかせか動き回り、いつもより早い起床になんだか非日常感を覚えました。そして、何だかとても不安になり、お腹がズキズキしつつ会場へ。会場は徐々に人が集まり、見たこともない他の共演者の子達もゾロゾロ登場してきて、それまで人生初めてのへんなお腹の痛みを感じていました。

開演し、次々と共演者達の演奏が響く中、私は袖でじっと立ち尽くしていました。その時点では、まだ便通は催しておらず、緊張からの腹痛だったので、トイレに行かなかったんです。(大体私は、緊張するとどうしても排泄を後回しにしてしまう癖がありました。)

いよいよ私の番、という絶妙のタイミングでまさかのうんちサイン。しかしの観客の拍手が響く中、途中退場なんて出来ず、演奏を始めるも、お腹の痛みと共に猛烈な便意をもよおしました。
緊張そっちのけで、弾いてる間の私の頭の中はまさに(早くうんち出したい!)でした。そのおかげ?かどうかはわかりませんが、間違えるかどうかなんて気にせず演奏が出来て、無事一曲弾き終えることができました。

プロセミアムアーチの向こう側を気にせず、袖に退出した私はもちろん猛ダッシュでトイレ直行。焼き芋みたいにほわっとしたあったかさの、凄まじく立派な硬さのうんちが出て、正直ちょっと感動しました。同時にとても清々しい気持ちになりました。きっと人生最初で最後の激動の時を、鍵盤とともにその日一日で刻んだ気がします。